きれいのいろはーkireiroー

夏場に要注意!!レジオネラ症とは?

今年2月に、老舗温泉旅館の大浴場の湯から基準値の3,700倍ものレジオネラ属菌が検出されたうえ、保健所に虚偽の説明をしていたことが発覚し、4月に公衆浴場法違反(虚偽報告)の疑いで書類送検(その後不起訴処分)、という事件がありました。

発覚後の会見で経営者が「レジオネラ症はたいしたことはないだろう」「塩素の臭いが嫌いだった」など、温泉の衛生管理について甘い認識があったことを明かし、マスコミ各社も施設のずさんな管理についてセンセーショナルに取り上げていたため、覚えている方も多いのではないでしょうか。

一連の騒動の原因となったレジオネラ属菌。これに感染すると発症する可能性がある感染症をレジオネラ症と言いますが、実は夏場に多く報告されている感染症なのです。
今回は、夏場に向けて注意すべきレジオネラ症と、ご家庭での対策についてご説明していきます。

1 レジオネラ属菌とは?

レジオネラ属菌は河川や湖沼、温泉や土壌など、自然界に広く生息している細菌で、感染するとレジオネラ症を発症するリスクがあります。


レジオネラ属菌は、一般的に20℃から50℃で増殖し、36℃前後が最も増殖に適した温度と言われています。微生物が作り出した粘液性の生物膜(バイオフィルム、ぬめり)の中に生息するアメーバなどに寄生し、他の細菌や藻類から栄養分を吸収して増殖します。


そのため浴槽や給湯設備など、水が循環・滞留して微生物が増殖しやすい環境にレジオネラ属菌が入り込むと、急激に菌数が増えることがあります。

2 レジオネラ症の症状

レジオネラ症の主な病型としては、軽症の『ポンティアック熱』と、重症の『レジオネラ肺炎』とが知られています。


ポンティアック熱の潜伏期間は12時間~3日で、主な症状は発熱・悪寒・倦怠感などです。一過性の物で自然に軽快することが多く、抗菌薬なしでも数日以内に改善します。


レジオネラ肺炎の潜伏期間は2日~10日です。主な症状は38℃以上の高熱・呼吸困難・倦怠感・吐き気・下痢・意識障害などがあり、適切な治療が為されなかった場合には急激に重症化し、命にかかわることもあります。


高熱・呼吸困難・倦怠感など、レジオネラ肺炎には新型コロナウイルス感染症に似た症状もありますが、味覚・嗅覚障害を引き起こすことはありません。一方で重症化すると幻覚や錯乱などの意識障害を引き起こすことがあるのがレジオネラ肺炎の特徴です。
レジオネラ肺炎は抗菌薬で治療することができるので、重症化する前の早期診断、早期治療が重要です。

ポンティアック熱病型レジオネラ肺炎
12時間~3日潜伏期間2日~10日
発熱
悪寒
倦怠感
など
主な症状38℃以上の高熱
呼吸困難
倦怠感
吐き気・下痢
意識障害
など
自然治癒する
数日以内に改善
特徴急激に重症化
命にかかわる

3 主な感染源

レジオネラ症は主にレジオネラ属菌に汚染されたエアロゾル(細かい飛沫)の吸入によって、感染・発症します。


代表的なエアロゾル感染源としては、空調設備の冷却塔水、加湿器や循環式浴槽などが報告されています。

エアロゾル感染以外に、温泉浴槽内や河川で溺れた際に汚染された水を吸引・誤嚥したことによる感染事例が報告されています。また、レジオネラ属菌に汚染された腐葉土の粉塵を吸い込んだことが原因と推定される感染事例も報告されています。


レジオネラ症が夏場に多く報告されている理由は、レジオネラ属菌が増殖しやすい気候であることに加え、冷房の稼働に伴い冷却塔の稼働率が高まること、そして夏季休暇を利用しての温泉旅行や川遊びなど、感染源に触れる機会が増えることが関連していると考えられます。


なお、人から人へ感染することはありませんが、その感染源の特性から集団感染がたびたび報告されています。

4 家庭内での注意点は?

お風呂や加湿器などの閉鎖された空間の水にレジオネラ属菌はひそんでいます。

超音波式(非加熱式)の加湿器は常温の水が細かい水滴となって飛散するため、タンク内でレジオネラ属菌が増殖するとレジオネラ症の発生源となる可能性があります。

タンク内の水には水道水を使用し、毎日交換してください。汚れやぬめりが生じないように水を交換するごとにタンク内の洗浄をすることも大切です。
また、長時間使用しない時は水を抜き、洗浄してから乾燥させてから片付けるようにしましょう。

追い炊き機能付きのお風呂もレジオネラ症の発生源となる可能性があります。何日もお湯を抜かずに追い炊きを行っていると、同じ湯が配管内を循環・停滞することになり、レジオネラ属菌が増殖するリスクが高まります。

浴槽の湯は毎日交換し、浴室・浴槽は汚れが生じないように毎日洗浄しましょう。メーカーの取り扱い説明書を確認し、定期的に追い炊き用配管内の洗浄を行うことも重要です。

5 まとめ

夏季休暇を利用して旅行に行ったあとに具合が悪くなった場合、ますは新型コロナウイルス感染症を第一に考えるかと思いますが、似たような症状のレジオネラ症という感染症があることも覚えておいてください。

病院で診察を受ける際に、温泉施設や川遊びなど、レジオネラ属菌の感染源に曝露した可能性があることを報告することで、早期診断・早期治療に役立てることができるかもしれません。

RELATED ARTICLE関連記事

2023.03.06

新型コロナウイルスの消毒って結局何を使えばいいの?

2024.06.28

家庭での消毒における次亜塩素酸ナトリウムの使用方法とノロウイルス対策

2023.03.06

コロナ禍で病院へ行くときの注意点